【この作品が生まれたきっかけ】

このアルバムは僕にとってとても意味のある作品です。あの大震災をきっかけに生まれた曲が何曲か収録されていますし、それ以前に作った曲もそれに合わせてリメイクし、完全なひとつの世界に統一しました。その作業は大変でしたが、とてもやりがいのある仕事でした。

僕の音楽は、これ、といったジャンルが指定できません。だから人にジャンルは何?と聞かれるといつも困るのです。シンセ、ロック、それからエスニックもある、和楽器も使うしアンビエントも作る。でもどれも本当の自分なのです。丁度どんな服を着ようと人間という中身は変わらないというのと同じ。その中で、聴いてくれる人が何かひとつでも気に入ってくれたら、それだけでうれしいのです。



【収録曲目について】

1.Blessing of Nature:::with Japanese traditional impression:::
〜この曲は日本人としての側面とエレクトリックの融合を目指した作品です。最初は「MIKADO」というタイトルを付けていたくらいですから。自然の恵みである雨に感謝する子供たちの歌と雅楽の演奏。それらがシンセサイザーというフィールドで出会い互いに溶け合います。

2.水童子(mizu-Wara-shi)
〜今年僕が作ったキト伝説の物語に登場する悪霊のテーマ。悪霊と聞くと奇異な印象ですがこの水童子は悲しい運命を背負っていました。冒頭の笛の音の悲しさはそのあたりから来ているようです。全編に和楽器の笛を取り入れ日本色濃厚に仕上げました。他にはバスドラムとベースの音色とタイミングに気を配りました。

3.眩影舞曲〜烈(gen-Ei-Bukyoku-retsu)
〜河合村レーザーショウ「アスハノコトヒメ組曲」の最終曲です。ハードロックの影響を感じさせる1曲。この作品は元々オルゴールで奏でる舞曲だったため、最初ハードロックとはミスマッチかと思っていたのですが、意外にフィットしました。「烈」というタイトル名はそこから来ています。実際の演奏はまだ1度しかありません。

4.SORA
〜アルバム唯一のピアノソロ作品。晴れた日、空を見ながらたった1回だけ弾いて録音した曲。テンポもかなり揺れていますし、若干ぎこちないですが直さないでそのまま収録しました。あまりに晴れた空は、逆に悲しくなってくる、そんな切ない気持ちを感じ取ってください。

5.Kaleidoscope Ver2.1
〜和楽器とエレクトリックの融合を目指した作品。サイバーシティー東京の万華鏡のような夜景をイメージしています。コンセプトはまだ実験的段階ですが本人は気に入っています。空間を意識したアレンジで、音の「行間」を生かす工夫をしました。独自の手法として確立したい分野です。

6.Dawur wind〜ダフールの風
〜和太鼓奏者、若山雷門氏に依頼され作った、和太鼓とモンゴル楽器奏者のための曲。ダフールとはモンゴルの地名で、モンゴル馬がダフールの大地を駆けてゆく様子をイメージして作曲しました。演奏はアルバム中もっとも困難で、スケールも平均律ではない微分音を多く使用しています。

7.Segment A-3:::Thoughts on Fukushima
〜アルバム中、唯一の実験的音楽。福島の事故に対するメッセージを込めました。ピアノ、チェロ、供に1回だけ弾いて録音しました。この曲はもう二度と演奏できないと思います。また、演奏することがないよう祈ります。

8.Temple in silent wood
〜静かな森の中に佇む寺院をイメージした曲です。寺院と言っても、和楽器が随所に使ってあるので、日本のお寺の方が近いでしょうか。和楽器とエレクトリックの融合は、単に楽器を取り入れるだけではなく両者を完全に対等な立場に置くことによって表現されます。そこに国境はありません。

9.Requiem1〜from Legend of KITHO
〜レーザーショウ「キト伝説」のために作った、最もグラーヴェなシンフォニー。重くのしかかる運命を克服していく力を表現しています。1度だけピアノで弾いて、それを元に楽器編成をし、すべてシンセサイザーで置き換えて録音しました。

10.RAISE JAPAN(2011remix ver.)
〜レーザーショウ「キト伝説」のために作った曲を、新たにミックスだけやり直しました。レーザーショウの終盤に使われる、ナイヤガラという演出効果に合わせ、後半はゆったりとしたシンフォニーになっています。次第に明るく力強くなってゆく曲調は、未来への希望を表し、まさにタイトル曲としてふさわしいと思います。


以上、自身のアルバムについて解説させて頂きました。



Kaneko Takuji 2011
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